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25/06/2000
Last renewal
 この改修計画は以前の高架鉄道であったところを、別の機能を持たせ再生したものです。1859年に高架鉄道の路線として建設され、110年に渡って利用されてきましたが、路線は廃止されそのままとなっていました。これを1986年にパリ市が買い取り再利用することとなったのです。再利用とはいっても、全く違う用途で復活させています。かつての軌道は歩行者用プロムナード、アーチの下はアトリエや店鋪としたのです。近代の遺産を現代に再利用したものなのですが、元々は高架鉄道という土木構造物でした。これを住空間として店鋪などに利用しているのですが、意外にしっくり馴染んでいました。無理に利用しているといった感覚はなく、アトリエや店鋪においては、すっぽりはまり込んで居るといったもので、高架の建設当初からあったかのようにも思えるほどです。日本でも都心部の高架下は店鋪としてよく利用されていますが、基本はそれと同じものでしょう。しかし、この場合は遺産としての利用です。都市部高密度空間の隙間利用とはまた違う目的なのです。 アーチ下の店鋪空間は基本は2層構造ですが、中には通りの反対(裏側)で、2階に当たる高さの場所に広場を設けた所があります。この広場は周囲の集合住宅へと隣接しているものでした。通りに面しては店鋪となっているのですが、この高架プロムナードは周辺住空間の一部としてつながるよう再整備されているものだったのです。高架の上は緑道としのランドスケープでしょうか、小道として整備され、総延長1.4kmを空中緑化しています。そこには樹木、パーゴラ、ベンチ、プランターなどが設けられおり、人の通りも多く、パリ市民の憩いの場として十分に利用されているようでした。また、アーチの店鋪空間には、その正面にガラスがはめ込まれ、すべてに木製サッシが使用されています。そのアーチ中央部分に、はめ込まれた梁だけ若干のむくりが設けられているのです。一見すると平坦に見えるガラスのファサードは、よく見ると実は少し彎曲した部分あることが判るものでした。よく見ないと気付かない程なのですから、別に平坦で良かったようにも思うのですが、でもその微妙さが、この単調な連続空間に無意識のうちに変化を感じさせているのかもしれませんね。そうした効果があるのでしょうか。またガラス面が、アーチの角から少し後退した位置に設けられていることで、店鋪に奥行き感を視覚化させていました。この高架は今から140年以上のもので、これだけ古ければ確かに歴史遺産です。これがもし日本の都市で同様の状況に置かれた遺産があるとすれば、おそらくパリのようにはいかないでしょう。日本の都市における高密度な地域で、140年と古いモノでなくとも、昭和初期以前のもので遺産としての価値が高いものは、かろうじて一部残すことはあっても、全面的に再利用することは稀だからです。このWebで紹介された神戸市立魚崎小学校(昭和初期の貴重な建築)のように取り壊され、最新の小学校(何が最新なのか?)に生まれ変わるのが落ちです。ヨーロッパへ旅行すれば、様々な建築や歴史遺産を目にし、単に遺産としてではなく、文化的な側面は十分活かして、再利用(リサイクル)しているのですが、日本での近代建築の扱いには残念に思うことが多いのです。できれば全部(又は大部分)残した上で再利用を日本の都市中で実現してほしいものです。日本では建設が開発として経済優先となるためか、通常、建築を文化として保存することに対して優先されないということでしょう。これが地方だと、地域活性化事業と称し、近代遺産を観光スポットとして整備してはいるのですが。こうした高架は土木構造物の遺産ということになります。土木構造物の遺産は、日本でも保存されているものの、そのままの保存が多く、再整備として利用されているものは少ないのも現状です。京都にインクラインという明治に建設された土木構造物を、歴史遺産として復元しているのですが、整備はされているものの、復元としての整備であり、再利用としてではないのです。


バスティーユ高架鉄道改修 Bastille Viaduct
パトリック・ベルジェ Patrick Berger

建設 1995年
用途 店鋪 及び 公園

所在地 フランス パリ
Paris, France

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